図書館本

神門さんの農業を思う、心の底からの叫びだろう。
初めて神門さんの本を読まれる方には、かなり過激な論客だと思われるかもしれませんが、是非とも「日本の食と農」「さよならニッポン農業」「偽装農家」などをお読みください。

簡単にまとめれば、「識者」やマスコミの垂れ流しの農業論に騙されてはいけないというところだろう。現実の日本の農業、その問題点を指摘し、ささやかな希望の未来を「技能集約的農業」で作っていこうとしています。現実には「マニュアル依存型農業」の弊害だらけの姿を綴っています。可能ならば終章 日本農業への遺言から御読みになるとよいかもしれません。農業崩壊のメカニズムを記しておかねばならないと言う氏の遺言なのだろう。そして3.11原発震災に対しても学者としての懺悔をしている。

備忘録メモ
「能書き」に注意。有機だから安全安心?
直売所だから(地元だから)安全安心?
消費者の舌の劣化(味音痴)
担い手助成の土木事業、その後農地転用
農地版「消えた年金」事件、農地のはずが駐車場(民主党、輿石東氏)、工場、野球場などの怪
地権者がマスコミや識者に本音を語っているか?(金儲けネタを簡単に話す?)
危ないスローガンに注意 「農商工連携」「六次産業化」「地産地食」「ハイテク農業」「半農半X」「食育」「定年帰農」etc ムードやイメージに流される農業
農業論の3つの罠 1.識者の罠(現場しらずの学者)、2.ノスタルジーの罠(農業、農村への思い入れ)、3.経済学の罠(攻めの農業の自由貿易論と保護貿易論の八百長的猿芝居)
農家と非農家の所得水準、農家の方が良い
生産の増大を目指すのではなく、耕作技能の養成を目指すべき。それが日本農業の強化
政府による技能破壊、地方分権と称して農業委員会が農業より農外転用に熱心
農水省としては農業者が技能を失った方がありがたい状況(新規就農制度等をふくめ)
日本の農地問題の特徴 1.集落単位での活動の弱体化 2.優良農地ほど転用需要が大 3.環境保護の効果が大(ただし山林に戻す方がよい場合もある)4.土地計画の統一性の欠如
1990年以降のJAの弱体化(ある意味、昔は監視能力があった)
農業で食っていけないからやむをえず兼業に出る、の実態は安定的な収入があるから農業で食う必要がない。
保護貿易と軍事的拡大による閉塞感打開(TPPの議論も似ているかな?満州ブームと農業ブームの類似性)
農業は逃避的な夢物語を展開するには恰好の対象。
ハイテク農業(植物工場等)の嘘(破綻例多数)、奇跡のリンゴは奇跡(木村さんの死をかけた努力だとは評者も思うが)、財界リーダーの満州夢の国論と同じ匂い
農商工連携が商工業者の補助金獲得の口実に使われている場合が多い
患者のために医学があるのであって、医学のために患者があるわけではない、これと同じことが現実問題と経済学の関係にもあてはまる。
規制緩和(農地取得等の)と競争、不正問題、大規模化と競争、
JAの真の病巣 組合員制度(組合員と准組合員) 正・准組合員戸数は農家戸数の3倍以上、金融業の兼業
政府、経団連、JAによる脆弱なマニュアル依存型農業へと補助金を誘導
90年代欧米は多大な農業補助金注入で食糧自給率を高めたが、それは同時に途上国の穀物生産を犠牲にする行為であった。(ここ大切) 日本は高関税で農産物輸入に消極的であった。飢餓と肥満(先進国の)問題は食糧の絶対量の問題でなく、経済の問題。
先進国内での話題(食料危機だの食料自給率)に没頭している方が当面は居心地がよい「識者」たち
土作り名人K氏の話は思いろく示唆的である。
土地利用における必要政策 1.平成検地 2.徹底した情報公開(転用等における) 3.人から土地への大転換
お金や地位は、メシのうまさを保証しない。食事という行為は他の生命を犠牲にする行為だと認識することが大切である。







まえがき
第1章 日本農業の虚構
1 二人の名人の死
2 有機栽培のまやかし
3 ある野菜農家の嘆き
4 農地版「消えた年金」事件
5 担い手不足のウソ
6 「企業が農業を救う」という幻想
7 「減反悪玉論」の誤解
8 「日本ブランド信仰」の虚構
第2章 農業論議における三つの罠
1 識者の罠
2 ノスタルジーの罠
3 経済学の罠
4 罠から逃れるために
第3章 技能こそが生き残る道
1 技能と技術の違い
2 農業と製造業の違い
3 日本農業の特徴
4 欧米農業との対比
5 技能集約型農業とマニュアル依存型農業
6 技能こそが生き残る道
7 貿易自由化と日本農業
第4章 技能はなぜ崩壊したのか
1 日本の工業化と耕作技能
2 政府による技能破壊
3 農地はなぜ無秩序化したか
4 放射能汚染問題と耕作技能
第5章 むかし満州いま農業
1 沈滞する経済、沈滞する農業
2 農業ブームの不思議
3 満州ブームの教訓
4 満州ブームと農業ブームの類似性
第6章 農政改革の空騒ぎ
1 ハイテク農業のウソ、「奇跡のリンゴ」の欺瞞
2 「六次産業」という幻想
3 規制緩和や大規模化では救えない
4 JAバッシングのカン違い
5 JAの真の病巣
6 農水省、JA、財界の予定調和
7 農業保護派の不正直
8 TPP論争の空騒ぎ
9 日本に交渉力がない本当の理由
第7章 技能は蘇るか
1 「土作り名人」の模索
2 残された選択肢
3 消費者はどうあるべきか
4 放射能汚染問題と被災地復興対策
終章 日本農業への遺言
主要な参考文献

日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)
日本農業への正しい絶望法 (新潮新書)