図書館本

高橋氏(1956-)はフクシマ県生まれで現在東大教授、専攻は哲学。
東大の人文社会系の方に原発震災に関する学者としての反省を述べられている方は何人かいると思いますが、果たしていわゆる理系の学者で科学者の社会的責任に関する論考をされた方がいるのだろうか?

本書は日本人として日本という国土に住む責任、あるいは地球上に日本人が存在するための責任に関して「犠牲」というテキストを通して思考、考察しています。本書では触れられていませんが、青森なども軍事基地、核廃棄物捨て場として見れば犠牲のシステムそのものではないでしょうか。

備忘録的メモ
犠牲のシステムとは
「犠牲のシステムでは、或る者(たち)の利益が、他のもの(たち)の生活(生命、健康、日常、財産、尊厳、希望等々)を犠牲にして生み出され、維持される。犠牲にする者の利益は、犠牲にされるものの犠牲なしには生み出されないし、維持されない。この犠牲は、通常、隠されているか、共同体(国家、国民、社会、企業等々)にとっての「尊い犠牲」として美化され、正当化されている」

軍国主義も原発主義も不敗神話や安全神話をつくり一切の異論を排除し大本営発表によって欺き、破綻。
軍国主義とはすなわちヤスクニという犠牲のシステムであり、原発主義はすなわち原発という犠牲のシステム。
植民地主義、奴隷制度、

責任の所在 原子力ムラ、政治家、官僚、司法(佐藤栄佐久元知事(プルサーマル非承認)の国策捜査)、学者・専門家、

犠牲のシステムと天罰論 石原都知事、大阪府議会議長、
天譴論 内村鑑三の「天災と天罰および天恵」
浦上壊滅(長崎原爆)は聖地浦上(キリスト教)が犠牲の祭壇に屠られ燃やさるべき潔き羔(こひつじ)として選ばれた?(永井隆、長崎の鐘)
天罰論が天恵論になるのはなぜか 罪悪の償い、非戦主義者の戦死(内村鑑三)、犠牲の論理 天罰は天恵のための天罰であり、天恵は天罰あっての典型である。(天恵、天罰がお互いに求めあう関係の成立) 神の善意の声が天罰
天罰論の問題点 1.生存者が一方的に罰の犠牲を死者に集中させて語る 2.天恵論との決定不可能性 3.天罰を特定の災害に限ることの問題。

「日本」イデオロギーの表出 (震災後のメディアによる、日本頑張れ、日本は強い、日本は一つ、日本人の誇り等のスローガン) ナショナリズムというより日本ナルシズム、日本フェテイシズムの方が適切

佐藤優氏の一時的翼賛体制の確立(震災後の国民一体としての復興)に対して高橋氏は否定的であるが、沖縄に関する論考では佐藤氏の主張は引用されない(佐藤氏の母は沖縄出身であり沖縄戦での経験を佐藤優氏は深く思慮し沖縄問題に積極的に発言しているが)。

沖縄の犠牲
近衛文麿の上奏を天皇が退けた。
天皇の沖縄軍事占領へのメッセージ(シーボルト覚書)
沖縄を米国に犠牲として差し出すことによって、日本の国益そして天皇制にとっての利益を得ようと考えられる可能性
サンフランシスコ条約(1952年4月28日)沖縄では屈辱の日
0.6%の土地に在日米軍専用施設面積の74%が存在する。沖縄の人口は日本の1%

民主主義と植民地主義は決して矛盾しない。植民地主義はその内部に民主主義を含んでいる。現代の植民地主義は民主的植民地主義なのである。
多数決原理としての民主主義は、むしろ差別を正当化する。



高橋氏は「戦争絶滅請合い法案」あるいは「戦争絶滅受合法案」を紹介している。
要するに戦争するなら、まず責任者が最前線に出て戦えと。
そんな勇気と哲学をお持ちな政治家なり国家元首が日本に居ないのが残念である。

「戦争行為の開始後又は宣戦布告の効力の生じたる後、十時間以内に次の処置をとるべきこと。即ち下の各項に該当する者を最下級の兵卒として招集し、出来るだけ早くこれを最前線に送り、敵の砲火の下に実戦に従わしむべし。
一、 国家の元首。但し君主たると大統領たるとを問わず、尤も男子たること。
二、 国家の元首の男性の親族にして十六歳に達せる者。
三、 総理大臣、及び各国務大臣、並びに次官。
四、 国民によって選出されたる立法府の男性の代議士。但し戦争に反対の投票を為したる者は之を除く。
五、 キリスト教又は他の寺院の僧正、管長、その他の高僧にして公然戦争に反対せざりし者。
上記の有資格者は、戦争継続中、兵卒として招集さるべきものにして、本人の年齢、健康状態等を斟酌すべからず。但し健康状態に就ては招集後軍医の検査を受けしむべし。
以上に加えて、上記の有資格者の妻、娘、姉妹等は、戦争継続中、看護婦又は使役婦として招集し、最も砲火に接近したる野戦病院に勤務せしむべし」

【目次】
はじめに
第一部 福島
第一章 原発という犠牲のシステム
第二章 犠牲のシステムとしての原発、再論
第三章 原発事故と震災の思想論
第二部 沖縄
第四章 「植民地」としての沖縄
第五章 沖縄に照射される福島
あとがき
主な引用・参考文献
犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書)
犠牲のシステム 福島・沖縄 (集英社新書)