図書館本

田村氏(1962-、東大工卒、自治省、出版時、新潟大助教授、現教授)は確かB級グルメの仕掛け人ですよね。
同時に「暴走する地方自治」を読んでいますが、こちらは今一つというか感情的。

さて本書ですが、ある意味、日本も世界もメディア発表に騙される仕組みを読み解いています。
世論調査って?ネット調査って?テレビ視聴率って?都道府県ランキングって?

TVや新聞で発表される数字に疑いを持たずに吸収して生活することの危険性は3.11原発震災で
大きく認識されたと思います。

日本人の多くが、自分は平均、あるいは平均以上でありたいと思っているのではないでしょうか?
筆者はこれを平均信仰の罠と指摘します。

調査やアンケートの設問が恣意的にある答えを誘導するような例に枚挙にいとまがありません。
調査対象、対象年齢、性別、対象数、有効回答率等々、読み手が注意していないと簡単に騙されて
しまう現実があります。

たとえば「経済効果の罠」のところで指摘される、数字による気分的効用(景気が良くなるであろうという心理的要因)などの危険性を、マイナス効果を指摘しない現実から論じています。まさに原発誘致やリニア新幹線問題の根本の問題ですね。

プラス部分だけを楽天的に推測し、ある種の希望的観測をそのままメディアに流すことでこれまでの日本社会が成立してきて世界最悪の債務状況を作ったのでしょう。

官庁が使うコンサルタントは「いかようにも結果を出します」、そして事業を正当化すしたい官庁と受注が欲しいコンサルタントによる茶番に過ぎないと、政策研究大学院大学の福井秀夫教授は指摘しているそうです。
(地方空港や高速道路などが良い例)

日本人貯蓄額平均が1273万円であるが、これは平均(少数の高額貯蓄者に金額が引っ張られる)であり、実は中位数は805万であり、実は200万以下が16%、200-400万が13%も居るのである。

道路の整備水準の国際比較においても、国土面積あたりの道路距離、人口あたりの距離等々を複数の指標で評価することが当たり前であるが、一部の比較(日本の方が海外より劣って見える数字を使い)で高速道路計画を進める滑稽さを指摘しています。(国破れて道路ありの未来)

最後に、筆者は指摘しています。
冷静な議論をするためには、出来るだけ客観性の高いデータを揃える必要性がある。そしてまた、データの信憑性、妥当性などを判断でるだけのいわば「データリテラシー」といった能力を国民一人一人に求められるだろう、と。

データの罠 世論はこうしてつくられる (集英社新書)
データの罠 世論はこうしてつくられる (集英社新書)