図書館本

新渡戸稲造(1862-1933)一期生の大島正建(後の甲府中学校長1901-1914、石橋湛山は大島の陶酔をうけた)とも交流があったとの記録もある。

さて本書であるが、1911年(明治44年)の「修養」と1900年(明治33年)「Bushido, The Soul of Japan」より「克己」をテーマに項目を精選し現代仮名遣いを用いたとある。

備忘録メモ
「願わくば、われ太平洋の橋とならん」東京大学入学の際の面接で、英語を学んでどうするのか?という問いに答えて。

要するに良好なことはもったいないことであり、いつまでもそんないいことがつづくはずがないと考えるのだ。いつか自分にも悪い時が来る。その時はどうするかをあらかじめ考えて、その時の決意をする。そうすれば何事につけても恐ろしいということはなくなるはずだ。(最悪の最悪を想定すればよい)

つまり、困難はいつか快楽に到達する順序であると思うのだ。そうすれば困難に遭遇しても落胆することもなく、かえって愉快になり勇気が湧く。(黒雲の後ろには太陽が輝いている)

最悪のことを仮定すれば、それよりはるかにましな今日の困難に打ち勝とうとする勇気は自然と湧いてくるものである。(極限の不幸を空想する訓練)

自分の一身上に何か事が起こっても、中略 自分がこれくらいの不幸にあうのは当然であると思えば、少しも恐ろしくはない。先代の不幸に比べれば何でもないという気持ちになり、勇気が湧いてきて、たいていのことはやり遂げられるという自信が持てるのである(不遇の祖父、罰を受けた父が教えてくれたもの)

早起きの習慣、弱点の矯正、せっかちの矯正、憎悪の感情、怒りの抑制、他力による修養 (僕が克己心を培うために実践していること)

封建制度が生み出した武士道も、封建制が消滅した後も生き残って、我々の道徳の道を明らかにしているのである。武士道というのは、それを象徴する桜と同じく、我が国に固有な花である。

僕は一に日本武士道の起源、二にその特質と教訓、三に社会全体に及ぼした感化、四にその感化の持続、この四つについて説明を試みたいと思う。

武士道には成文法はない。(武士諸法度には道徳についての訓戒はほとんどない。

礼の最高の形は愛に近いのである。「礼は寛容であり、人の利益をおもんぱかるものである。礼は妬まず、誇らず、驕らず、非礼を行わず、自分の利を求めず、軽々しく怒らず、人の悪を思わない」ということができよう。

富の道は名誉の道でない。(武士道の倫理は商業に応用しえない)

僕はしばしば、武士道の信は勇気よりもっと高尚な動機を持つのかどうか、を考えている。日本にはウソの証言をしてはならないという積極的な戒めがないため、虚言は罪として断罪されず、ただ意思の弱さとして非難され、したがって不名誉なこととされた。正直honestyと名誉honorの観念は密接な関係にある。この二つの言葉は英語だけでなく、ラテン語、ドイツ語においても語源を一にする。

「恥もここに座るのを恥じる」ほど清廉で高い徳義をもった西郷隆盛の言葉、「天は天地自然のものにして、人はこれを行うものなれば、天を敬するを目的とす。天は人も我も同一に愛したものゆえ、我を愛する心をもって人を愛すべし。人を相手にせず天を相手にせよ。人をとがめず、我を誠の足らざるを反省せよ」


【修養篇】
■第一章 折れぬ心を欲する者へ(『修養』第五章「勇気の修養」より)
臆病な僕でも勇気を持つことができた
不遇の祖父、罰を受けた父が教えてくれたもの ほか

■第二章 敵を見極め、己に克つ(『修養』第六章「克己の工夫」より)
「克つ」と「勝つ」は異なる概念
人の持つ「色気」が一番の問題 ほか

■第三章 天を楽しみ地を楽しんで、世を渡る(『修養』第十三章「道」より)
緩やかな傾斜を大勢で登ることも貴い
「給料に見合う仕事しかしない」ことの愚 ほか

【武士道篇】
■序文 僕が『武士道』執筆に至った動機(『武士道』「原序」より)

■第一章 武士道とは何であるのか(『武士道』第一章「武士道の倫理系」より)
桜と同じ我が国固有の花
武士たちの心に刻まれた確たる行動規範 ほか

■第二章 武士道の源にあるもの(『武士道』第二章「武士道の淵源」より)
仏教の影響―生に執着しない気概
神道の影響―忠誠心と愛国心 ほか

■第三章 正義―もっとも厳しく、率直で男らしい徳(『武士道』第三章「正義」より)
武士道の中で一番厳しい掟
義理とは鞭を持った厳格な教師 ほか

■第四章 勇気―勇敢で冷静沈着な心(『武士道』第四章「勇気」より)
真の勇気とは「死ぬべきときにのみ死ぬこと」
勇気を極めれば仁になる ほか

■第五章 仁―君主たる者が持つべき資質(『武士道』第五章「仁」より)
王たる者が備える徳
武士が詩歌や音楽をたしなむ理由 ほか

■第六章 礼―人に対する同情の優美な表れ(『武士道』第六章「礼儀」より)
相手の感情を思いやる心の表れ
贈る品物を尊ぶアメリカ人、贈る気持ちを尊ぶ日本人 ほか

■第七章 誠―地位の高い者の徳(『武士道』第七章「至誠」より)
何よりも重かった「武士の一言」
遠く離れたところにある武士道と商業道 ほか

■第八章 名誉―恥を知り、試練に耐える(『武士道』第八章「名誉」より)
「恥を知れ」が最大の戒めである理由
寛容と忍耐が武士の行き過ぎを抑制した ほか

■第九章 忠節―命をかけて守るべきもの(『武士道』第九章「忠節」より)
すべての行為の根底に「忠」がある
忠心とへつらいはまったくの別物 ほか

■第十章 現在に活かす武士道―不死鳥のように蘇る(『武士道』第十七章「武士道の将来」より)
すべての日本人が武士の魂を内包している
武士道の教えは永遠に続く ほか

武士道と修養
武士道と修養