あんぽん 佐野眞一 小学館 2012 買っちゃいました(笑

佐野さんが前著「津波と原発」で孫さんをあまりにも持ち上げていたのが不思議だった。

その理由が分かりました。僕は週刊誌を読まないので知らなかったのですが、佐野さんが2011年の1月から週刊ポストに孫さんの評伝を連載していたんですね。そのまとめが本書になるわけです。

佐野さんの評伝やルポはその奥行きの深さと広さにいつも驚くばかりです。宮本常一と渋沢敬三を調べた「旅する巨人」もそんな本でしたね。

さて本書の凄さは、孫正義氏の一族そして先祖まで訪ねてしまうことでしょうか。そして裏を取ることを忘れない。さらに、出自だとか、職業だとか、身分だとかを超えて見る立ち居地の佐野氏の態度が気持ちが良いのである。(背中や内臓から描くと、あとがきで書いている)


備忘録的メモ
孫さんの歴史観の欠如、紙の雑誌、書籍は30年後になくなっているという態度。(佐野さんはここに孫さんのいかがわしさを感じると書く)
在日という劣等感やコンプレックスが孫の上昇志向の原動力になっているといった紋切り型の主張はしない。
起業後3年半の長期入院時代(結婚して子供が生まれてすぐ)に3000冊の本を読んだ。
われわれ日本人が孫の半生から一番汲み取らなければならない在日の苦い物語がすっぽり抜け落ちている。孫の額には子供の頃、石をぶつけられた傷跡が今も残る。在日問題を見て見ぬふりをしたり、元在日の孫に批判にもならない差別的メールを投稿するみっともないマネは、もういい加減にやめよう。それは日本人はやはり尻の穴の小さな島国根性民族だったのか、と世界中に馬鹿にされるだけだからである。

東日本大震災に直面して孫は「自分の非力さが悔しかった」と言って涙ぐんだと。そして死ぬまで原発に反対するという。100億の寄付と自然エネルギーのための財団に10億の出費をする。
そんな孫に佐野氏は魅力を感じたのだろう。

民族差別の話が沢山出てくるのだが、2001年12月、現天皇の誕生日の記者会見で天皇が「桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると「続日本記」に記されていることに、韓国とのゆかりを感じています」という趣旨の発言をしたことを当然、佐野氏は知っているはずなのだから、いかに日本人が出自で日本に住む在日外国人を差別をすることの愚かさを指摘しても良いのでは思ったのである。

あんぽん 孫正義伝
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