津波と原発 佐野眞一 講談社 2011年6月
図書館本

さすがノンフィクションの佐野さんという作品。
自ら歩き、インタビューし、一次資料を読み解いて考察を加える。
僕は佐野さんの作品は宮本常一と渋沢敬三を描いた「旅する巨人」で読みだした。
残念ながら「東電OL殺人事件」は読んでいないが、佐野さんと東京電力、そして正力松太郎(読売新聞、原発誘致)の係わりと今回の福島原発震災は繋がっているのでしょう。

既存メディアもフリージャーナリストも描かない大震災の内部を佐野さんならではの視点と批判精神で綴っていると思います。
被災したおかまバーの名物ママ、共産党元幹部、定置網の帝王などのインタビュー。

そして逮捕覚悟での原発地帯への取材、そこで見た地獄絵のような豚舎。

備忘録的メモ
私たちは原発建設に反対しなかったから、原発事故という手痛い仕返しをされたわけではない。原発労働をシーベルトという被曝量単位でしか言語化できなかった知的退廃に仕返しされたのである。

原発立地:陸軍飛行場、塩田(堤 康次郎がその後売却)、高崎、横須賀、水戸も候補地
中曾根はアイソトープを県内の公衆浴場に配り原子力温泉で観光をと考えた。
相馬には因幡(鳥取県東部)から天保の頃に移民(第一原発の北側) 差別、偏見の歴史
正力の黒子としての柴田秀利が活躍して、アイゼンハワーの演説(s28年12月)からわずか4年(s32年9月)で東海村第一原子炉に火入れ式 
正力はCIAのコードネームを持つが、おそらくCIAの言う事を聞くふりをして自分の思うように使いこなしたのではないか。正力は大衆が望むものしか興味がなかった。

朝日新聞は東電OL殺人事件を、被害者肩書をその後「電力OL」に変更した。
東電広報の慇懃無礼な懐柔策(釣りへの誘い、交際費が300万/月使える)

原発労働は誇りを生まない。(隠蔽体質)

孫(ソフトバンク)ほどこの問題の本質を実のある話として語れる人間はほかにはいない。だがそれはこうも言える。一介の通信業者に過ぎない孫の言動がいま一番注目される。それはリーダーなきこの国の不幸だと思うのは、私だけだろうか。

津波と原発
津波と原発
クチコミを見る