中村克郎、わだつみ平和文庫で検索された方が沢山ブログに訪れてくれました。
調べたら、
8月21日放送 1:50 - 2:50 TBS
わだつみのこえよ永遠に

という番組が放映された様です。

大学院時代、共同研究をさせていただいた当時東大産婦人科の教授であった川名尚先生から
私が地元(山梨)に帰るのであれば、中村はるね先生(克郎先生のご長女)を紹介しますと言われた。

最初は、わだつみの声?、それは何?という感じであった。
その後、はるね先生ともHIV関連の仕事を山梨で一緒にさせていただき、県内で最初のHIV感染者報告に
繋がりました。また娘の出産でもお世話になったりと。

はるね先生はその後銀座で不妊治療等のクリニックを開業され、さらにわだつみ平和文庫の設立に
まさに満身創痍のご活躍です。
個人的に思うのは、克郎先生もはるね先生も、二度と愚かな戦争をしてはいけないのだというメッセージを
世の中に発信しているのだ。

研究者を目指したにも係わらず、国のために命を落とした中村徳郎(克郎氏の兄)の思いが本の中にある。

中村徳郎
昭和19年6月20日午前8時

父上母上様。弟へ。
門司市大里御幸町 辰美旅館        徳郎

何もかも突然で、しかも一切がほんの些細な運命の皮肉からこういうことになりました。しかし別に驚いておりません。克郎(弟)に一時間なりとも会うことが出来たのはせめてもでした。実際は既にその前日にいなくなっているはずでした。そうしたら誰にも会えなかったのです。
中略
最も伴侶にしたかった本を手元に持っていなかったのは残念ですが致し方ありません。それでも幾冊かを携えてきました。
中略
今の自分は心中必ずしも落ち着きを得ません。一切が納得が行かず肯定が出来ないからです。いやしくも一個の、しかもある人格をもった「人間」が、その意思も意志も行為も一切が無視されて、尊重されることなく、ある一個のわけもかわらない他人のちょっとした脳細胞の気まぐれな働きの函数となって左右されることほど無意味なことがあるでしょうか。自分はどんな所へ行っても将棋の駒のようにはなりたくないと思います。
 ともかく早く教室へ還って本来の使命に邁進したい念切なるものがあります。こうやっていると、じりじりと刻みに奪われてゆく青春を限りなく惜しい気がしてなりません。自分がこれからしようとしていた仕事は、日本人の中にはもちろんやろうという者が一人もいないと言ってよいくらいの仕事なのです。しかも条件に恵まれている点において世界中にもうざらにないくらいじゃないかと思っています。自分はもちろん日本の国威を輝かすのが目的でやるのではありませんけれども、しかしその結果として、戦いに勝って島を占領したり、都市を占領したりするよりもどれほど眞に国威を輝かすことになるか計りしれないものがあることを信じています。
 自分をこう進ましめたのは、いうまでもなく辻村先生の存在が与って力ありますが、モリス氏の存在を除くことが出来ません。氏は自分に、真に人間たるものが、人類たるものが何を為すべきかということを教えてくれました。また学問たるものの何者たるかを教えてくれたような気がします。私はある夜、西蔵(チベット)の壁画を掛けた一室で、西蔵の銀の匙で紅茶をかきまわしながら、氏が私に語った"Devote yourself to Science."という言葉を忘れることが出来ません。


きけ わだつみのこえ―日本戦没学生の手記 (岩波文庫)
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