日本民衆の文化と実像 長浜功 明石書店 1995
図書館本

前編にあたる「彷徨のまなざしー宮本常一の旅と学問」は読んではいないのですが、本書は宮本氏が残した学問の中身を中心に記しているということです。
宮本ファンとしては、柳田国男との学風の違い等の考察もあり興味深い。
また、非売品(現在は出版されている)である「宮本常一 同時代の証言」が追悼集としてあるということだ。
宮本常一(1907−1981)という民衆あるいは常民という目線で見た日本の実像。

備忘録的メモ
戦前の宮本の調査 静岡県の水窪集落では10年くらいで70数人の老人が自殺。(現世への失望と宮本は書く)
「豊かな世界の中で一番大事な基礎になるものは何かといいますと、連帯感を持つということではなかろうか」p38
「相身互い」の思想:見も知らずの旅人であった宮本を快く泊めてくれた人々
旧態依然の史観を見直すことの重要性:庄屋や代官、参勤交代の大名は常に悪者か?
柳田と家永三郎の民衆の捉え方の差異、家永はインテリが社会を動かすと考える
自然は寂しい、しかし人の手が加わるとあたたかくなる そのあたたかなものを求めて歩いてみよう 1965年から放送された「日本の詩情」の冒頭画面に宮本のこの一文。
自然に甘えていたけれど、自然を大切にした民族ではないというのが私の結論。P115
元来自然の管理者は農民だった。中略 真の発展というのは単に工業化するだけでなく、同時に自然や風物を美しく豊かにしてゆくことだと思うが、ただ道だけが美しく伸びてゆき、自然は荒廃しはめている。 1969年 p118
直接民衆と顔を合わせなかった柳田、民衆の真っただ中に入った宮本 (柳田批判ではなく)
「煮る」文化と武器の放棄、「焼く」文化におけるナイフ 茶碗に対して皿の文化


日本民衆の文化と実像
日本民衆の文化と実像
クチコミを見る