移行的混乱 平川克美 筑摩書房 2010
図書館本

「経済成長という病」「株式会社という病」が興味深かったので、続いて読んでみました。
個人的にはあまり経済というテキストに興味がないというか無教養であります。ただ、子供や未来の日本あるいは地球という文脈からはきっと経済という縛りからは逃げられないのでしょうから、少し本を読んでみるかといった程度です。
平川さんは、今回同時に読んでいたE.トッド(平川さんも書評をその本の中で書かれているが)「自由貿易は、民主主義を滅ぼす」藤原書店2010、の考え方を大きく採用しているんだと思う。
そして、平川さんの主張は「日本には成長戦略がないのが問題」ではなく、問題なのは、成長戦略がないことではない、成長しなくてもやっていけるための戦略が無いことが問題だと。そして当分の間は、経済成長待望論者による生産性向上と富の収奪のための様々な試行錯誤と、行き過ぎた金銭信仰のために破壊された労働倫理、そして拡大を続ける格差などによる移行期的な混乱が続くだろう。と

備忘録的メモ
経済成長と人口動態
人口減少という時代の中では、過去に参考にすべき例(日本の人口減少)がない
1950年8000万人、2000年1億3000万人
日本的労働エートス(道徳観):時間は貨幣(ベンジャミン・フランクリン)とは違う価値観 宮本常一や網野善彦が見た日本
「物いわぬ人々」(宮本常一)の仕事の質や行為
1億総中流の幻想(最大多数の最大幸福) 国際政治から見れば独りよがり。
時間と金との交換、労働と金との交換が自由に出来るという観念の価値観
可処分所得60年3万7千円、70年10万円台、80年30万円、90年44万円 食うために働くから、遊びや教養・教育のために働くへ。 社会主義の理想を事実上実現した時代
他者との「差異性」から他者との「共同性」へ

第1章 
百年単位の時間軸で時代の転換期を読み解く
第2章 
「義」のために働いた日本人―六〇年安保と高度経済成長の時代1956‐1973
第3章 
消費の時代の幕開け―一億総中流幻想の時代 1974‐1990
第4章
金銭一元的な価値観への収斂―グローバリズムの跋扈 1991‐2008
第5章 
移行期的混乱―経済合理性の及ばない時代へ
終章 
未来を語るときの方法について
付録 
「右肩下がり時代」の労働哲学(鷲田清一×平川克美)



移行期的混乱―経済成長神話の終わり
移行期的混乱―経済成長神話の終わり
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