日本のシシ垣 高橋春成 編 古今書院 2010
献本

読み応えのある良書(ちょっと高すぎるけど、5500円)

日本の里山と田圃や畑の境界に、獣害を防ぐ石垣や土を積み上げた構造物があった。
シシ垣は漢字では「猪垣」「鹿垣」「猪鹿垣」と書く。
10kmを越えたものもあったそうだ。
我々のそれほど先代ではない祖先は、食糧を守るために、共同体としてシシ垣を作り耕作地を守ったのである。もちろん重機もガソリンも無い時代に。
近年、野生動物による農作物の被害が多く報告され、さらには限界集落というような行政用語まで生まれて、山間部や漁村などの超過疎化が進み、共同体としての獣害の対応が取れないでいる所も多いと言う。
本書はまさに、ほぼ日本全国(東北・北海道はシシ垣は無いそうだ)に存在したシシ垣を学術的(考古学、地質学、野生動物学、民俗学、歴史学等々)および地域共同体活性化の活動等を通して調査考察している。
まさに、生きるための先人の努力と生き様を本書は紡ぎだしている。
ちょっと感じたのは、シシ垣だけに目が行って、里山という対象をどのように我々の先祖は考えたり(山の神や死生観(死んで山に還る)という文脈で)、利用していたかの考察が無いように思ったのである。

備忘録的にメモしておきたい。
中国山地にはシシ垣がなかった。その理由は放牧とたたら製鉄での木材の製炭化
柳田國男(1909)はシシ垣に言及している。
山と里との境界線としてのシシ垣の存在が忘れられていく。
沖縄の琉球イノシシもシシ垣により被害を軽減
イノシシの被害が大きい場合には銃の拝借を願いでて駆除した。蒲刈島では1706年10日間で親猪66匹、腹籠り子猪(?)73匹を打ち取ったとの記録がある。
羽後峠道(尾鷲市)、熊野古道にもシシ垣がある
獣害対策と土石流対策としてのシシ垣も存在する(滋賀県大津市)
岐阜県根尾谷 1804年から6カ年かけて約75kmのシシ垣が作られた。
現在のシシ垣:3段電気柵(非常に効果的、電気代も安価)、ワイヤーメッシュとトタンの組み合わせ柵も効果的、
地域ぐるみの獣害対策としての取り組みが必要、住民の総意、団結


日本のシシ垣
  • 高橋春成
  • 古今書院
  • 5775円
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書評