援助じゃアフリカは発展しない(原題:Dead Aid, 無駄な援助) ダンビサ・モヨ 東洋経済新報書 2010
図書館本


原著(2009)を買っておきながら、結局邦訳を読むという体たらく。なかなか経済の用語とかは無理な自分であります。
さて、訳者あとがきで書かれてもいるのだが、本書ではウィリアムイースタリーの「傲慢な援助」やミレニアムデベロッピングゴールズ(MDGs)の提唱者であるジェフリーサックスの著作「貧困の終焉」等にはあまり触れられていない。訳者はそれが不思議だと吐露している。まったく同感である。
多くの場合、アフリカ大陸を一つの国の様に語るが、実はモヨが指摘するように、そこには53ないし54の独立国が存在する。そこに文化、歴史、宗教、民族が横たわっているのである。筆者も言うが、すべての援助が悪いものではない、ただ究極の目標は援助のない世界なのだと。
さて、本書であるが、備忘録的にメモしておきたい。

マーシャルプランの成功(アメリカの西欧への戦後援助、5カ年)をアフリカでも機能すると考えているアメリカ
ネオリベラル(新自由主義)ミルトン・フリードマンとシカゴ学派がレーガン大統領やサッチャー首相に影響を与えた。安定化プログラムと構造調整プログラム
Good governance (良い統治)という冷戦構造下における援助の結果は?
欧米型民主主義こそが正義であり、経済的にも政治的にも成功するというシナリオ
ところが、民主主義で経済好転した例より民主主義に関係なく経済好転した例がある。
中央計画経済から市場指向的経済政策へ(理論的には正しいが、無理)
3種の倫理性(西欧的、リベラル、罪の意識)が開発問題に浸みこんでいく
援助の諸条件(コンデンショナリー)の諸問題(
政党制民主主義でなく、毅然とした意思のある慈悲深い独裁者の必要性
民主主義は経済発展の前提条件ではない
援助量のピーク(1970-1998)にアフリカの貧困率は11%から66%へ上昇
援助と社会資本―信頼の関係 援助はむしろ社会資本を弱体化する
援助は貯蓄と投資を抑制する、援助はインフレを起こす、援助は輸出部門を窒息させる、援助はボトルネックの原因となる(吸収能力)、
良い投資(世界の中でのラインキングを高めていく)成功例、ガーナ、ボツワナ、ナミビア、ザンビア等 サックスのMDGs達成推定は悲観的すぎる。
中国援助の「面倒なし、質問なし」と欧米の「耳だけをもって、口はいらない」という態度
中国援助に対するアフリカの好意的世論調査結果
中国はアフリカが必要とするものを持っていて、アフリカは中国が必要とするものを持っている。
アフリカは先進国の自国内農業補助金によって毎年5000億ドルの輸出を失っているという推計がある。
ウルグアイラウンドやGATT/WTOでアフリカの貿易問題が主要議題にならない
ブルキナファソの輸出の3分の1は中国への綿花
貧者の銀行:マイクロファイナンスやKiva(ネット上の投資システム)
資本の移動と競争こそが、最短期間で最大多数の人々を貧困から救う
条件付き現金給付(conditional cash transfer、直接に貧しい人々にお金を渡す)の成功例を考えるべき(途上国だけでなく、ニューヨークでも試行)
西側諸国の間違い、与えるに際して何も対価を求めなかった。中国の成功はビジネス。



第1部 援助が主役の世界
 第1章 援助の神話
 第2章 援助の略史
 第3章 援助は役立っていない
 第4章 経済成長の無言の殺し屋
第2部 援助がない世界
 第5章 援助依存モデルについてのラディカルな再考
 第6章 債券発行
 第7章 中国人は朋友なり
 第8章 貿易で経済発展
 第9章 貧者の銀行
 第10章 アフリカに真の開発を


これまで読んだ本を忘れないようにリストしておこう。


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