国を破りて山河あり 藤田恵 小学館 2010
図書館にリクエストして購入してもらった。

藤田さん(1939-)は徳島県の木頭村の村長(1993)に担ぎだされ、細河内ダム計画を中止に追い込んだ(2000)。行政や反対派からのすざましいまでの嫌がらせが在ったことは想像に難しくないし、本書の中にも押さえがちに書かれている。一度始まってしまうと暴走車のように止めることの出来ない大型公共事業の見本のようなダム計画である。そして、今現在も各地で同じような問題が起こっている。国の行政が利他的でなくなった時、小さな地域社会などはひとたまりも無く壊れていく。
中止決定までに50億円もの税金が投入され、仮に建設が始まれば1000億円ちかくの税金がさらに投入されたのだろう。いったい誰のためのダムなのか。そして木頭村にはすでに400以上の砂防ダムがあり、そのほとんどが土砂で今後埋まっていくという。
中止にいたる経緯は非常に示唆的である。たとえば役人に話をしてもまったく無駄であり、国会議員が最終的には政治的な判断をする。また多くの利他的なダム反対団体や個人のサポートがあったこと。
河川6法、これは川を壊してよいという法律である。これを変えなければ今後もダムは増え続ける。
ご自身の子供の頃のご苦労(多くの兄弟で、叔父の家に養子にだされ、両親の死、山の下刈りで同級生らと遊べなかった経験等々)が木頭村を守る原動力だったのかもしれない。


国を破りて山河あり 日本で初めて巨大ダムを止めた村長
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