悪いのは私じゃない症候群 香山リカ ベスト新書 2009
図書館本

この人は世間の現象をたくみに言葉に変換できますね。
なぜ、他罰的になっていくのか?
ちょっと安易な推測としての、小泉・竹中改革という指摘は、今後の歴史が明らかにしてくれるかもしれません。単純に日本だけの問題ではないのでしょうが、ある時期(特定は出来ないにしても)を境に社会が変化してくるという歴史はあるのでしょう。

興味深かったのは、スピリチュアルな世界での「私が悪いのではない」という意味づけ。
前世を語り、前世の自分が何であったのか。その前世に問題があったから、現世の自分が悪いのではないとする立場。なるほど、上手いことを考えるものである。
田母神氏の発言にみる他罰の思想の見解もなるほどと思わせる。
そして香山氏は最後に書く、一時的に「悪いのは私じゃない」と自己防衛に走ったり、誰かを攻撃して小気味よさを味わっても、その人たちは長期的には、自分で自分の首を絞めているにしかすぎないことになるのだ。中略 あまり品のよくないしつけの言葉に「バカと言う人がいちばんバカ」というのがあるが、このシンプルな原則を私たちはもう一度、思い出してみるべきではないだろうか。


《目次》
プロローグ----他罰の時代がやって来た!
第1章 学校が悪い!
 学生のあいだで剽窃が横行
 「学校が悪い、教員が悪い」
 萎縮する教師、保身に走る学校
第2章 医者が悪い!
 「医者が悪い」というモンスターペイシェント
 "くずれる"医師と患者の関係
 増える母娘共闘のプチモンスター
第3章 職場が悪い!
 労災認定されるうつ病が増加
 ギスギスした職場
 会社のトップに直接メールする社員
 新型うつは他罰の巣窟
第4章 家族の中の他罰主義
 「子どもが悪い」と逆ギレする親
 子どもは本来、自責感が強い
 「親が悪い」と言う"子ども"----アダルト・チルドレン
第5章 「前世が悪い」?のスピリチュアル・ブーム
 「原因が"私"じゃないなら、薬は要りません」
 「前世が悪い」
 スピリチュアル的原因論の"功罪"
第6章 科学の世界も「他罰のススメ」
 かつて、自分を責めがちだったうつ病患者
 「食べ物が悪い」
 「脳の傷が悪い」
 「遺伝子が悪い」
第7章 「悪いのは私だ」の歴史
 日本人は「自責な人」?
 「悪いのは日本ではない」
 負けないためには勝つ、もし勝てないならそれを誰かのせいにする
第8章 ネットという他罰メディア
 スマイリーキクチ氏のブログ炎上事件
 ゆがんだ平等主義といびつな正義感
 他人にだけ道徳的な人たち
第9章 他罰は自己責任論の裏返し
 イラク日本人人質事件
 「自己責任」と「自業自得」
 "自己責任"を回避するための"先制攻撃合戦"
 悪いのは私じゃない症候群の元凶は、成果主義と新自由主義的競争
エピローグ----悪いのは私じゃない症候群への処方箋
 「ピンチはチャンス」の自己責任論より「ピンチはピンチ」の分かち合い精神を
 「悪いのは私じゃない」----そう言わない勇気


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