大臣 増補版 菅直人 岩波新書 2009
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1998年に菅さんが書かれた「大臣」を前半に、そして鳩山政権誕生後の事を後半に置いている。
まったくのノンポリの自分としては、いかに法律と言うものが官僚側に有利に働くかが理解できた。もちろん、優秀な官僚のおかげで現在の日本が築かれた事は承知しているが。

自民党政権下では衆議院当選6回で自動的に大臣になれるというシステムが存在し(ハマコーさんは残念ながら大臣になってはいない)、官僚との阿吽の呼吸で政策や予算が組まれていた。
菅さんが指摘するように、それはまさに官僚内閣制度であろう。政治家にとってみれば利益者代表としての顔が立つし、官僚としては、着実に出世の道や自民党関連の企業との関係が構築できるのであろう。だから首相がコロコロ代わったり、大臣が不祥事で直ぐに退任しても昨日と変わる事無く行政は動いていくのだろう。

さて、前半では菅さんが厚生大臣(橋本内閣)の時の薬害エイズ問題での官僚との対峙の話は面白いが、あえて深部には迫っていないような気もします。医系官僚の事は書かれていますが、薬系官僚に関しては触れられていません。
後半部分では孤立する大臣サイドを補佐する形のスタッフの枠組み構築の話やイギリス型の内閣確立への取り組みを紹介している。そして国会内閣制への大改革として突き進むと。
これを書いている2010年8月現在、鳩山さんの退陣後、菅さんは総理として夏の参議院選挙で破れ、9月の民主党党首選を控えている。「大臣」から「総理」への話は次回の作品になるのであろう。是非ともパワーポリティクスの内情を庶民にも見せていただきたい。
ある意味、菅さんが初めての庶民出身の日本を思う利他的な総理大臣だと信じてみたいので。


大臣 増補版 (岩波新書)
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