日本人の多くは無宗教だと自らが語るが、その「無」は仏教からきていると養老さんは書いていた。
この映画はいろんな捉え方がきっと出来るのであろう。
賞を取った作品だということは知っていたがそれ以外の情報を持ち合わせないで見た感想を書き残しておこうと思う。

物質である脳が心を作り出す、これを心脳問題という。認知症という症状は多くの老人が(もちろん若い人にもあるが)避けて通れない人生の道筋なのかもしれない。そして回りの者は死を身近で見ることにより生を認識する。

死生観という文脈における認知症、それは死にゆくものの行程表なのだろうか。それとも生きる者たちへの伝言なのだろうか。

仏教以前の山岳信仰、それはヒトの死は森に還るのであり、先祖は森で子孫を見守っている。そして循環する時間の中でまた生を受けて元の住処に戻ってくる。

映像の中には人間のすべてが濃縮しているようである。食べる、寝る、そして作り出す。自然との共生と共死を繰り返す人々。

森、焚き火、沢の鉄砲水、それが何を表象しているのかは個人で考えてもよいのであろう。

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