沈黙の春―生と死の妙薬― レイチェル・カールソン 新潮文庫 昭和49年

初出は1962年アメリカ、翻訳1964年新潮社

以前一度読んだことがあるのだが、ほとんど記憶に残っていないのは、読んだ当時それほど農薬やら殺虫剤に興味もなく、自然とか環境という事を考えていなかったからだろうとおもう。
本書はレイチェル・カールソン(1907−1964)が綴った人間が作り出した物質による自然生態系破壊および人類自身の破滅への警告である。
農業の収穫量を向上させるための殺虫剤あるいは植物の病気を抑える農薬等が自然の生態系を壊し、河川を汚染し、対象となる昆虫や農作物あるいは植物以外の生物に多大な影響を与えると事を書き綴っている。
ただ、当時はまだ天敵となる昆虫や寄生虫を輸入して対策を取る事の方が良いとする考えであるが、これは現在ではさらなる生態系の破壊と考えられているのではないだろうか。
化学薬品が単なる人類という一生物のためだけに使用されているのは現在も過去も同じである。自然との共生と言いながら、つねに自然を利用し搾取しているのも人間であろう。科学が人類のためだけにあるという思想が変わらないかぎり、著者の危惧は永久に解決しないように思う。そして今もなお薬剤耐性を示す昆虫や微生物が増えているとともに、人間が感染する細菌やウイルスに関しても薬品に対して同様に薬剤耐性をしめし、さらにその耐性病原体に効果を付与する薬剤開発という悪循環が続いているのである。
一部数値等を挙げないでただただ危険であるという文脈がいくつかあるように思うが気のせいだろうか。


沈黙の春 (新潮文庫)
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