多くのアフリカ関連の本が2008年のTICAD(東京アフリカ開発会議)に合わせて出版された様だ。この本もまさにそうなのだろうが、筆者のアフリカへの想いは愛情に近いのではないかと思う。氏の著作「アフリカを食べる」「アフリカで寝る」は興味本位のテレビ番組と違うアフリカを見せてくれる。僕の記憶に間違いが無ければ松本さんは1984年頃にナイロビで朝日新聞の特派員をしていたと思う。そして「沈まぬ太陽」の主人公モデルの小倉さんもJALのナイロビオフィース(JALにアフリカ路線はないのだが)にいらっしゃったのではと。(間違っていたらごめん)
さて、今回の書であるが、読みだして胸が苦しくなる。アフリカと言う単語でアフリカの国々を語ってはいけないとは思うのだが、残念ながら松本さんのレポートが多くは的を得ている。特に酷いジンバブエの経済、オイルや鉱物資源利権に政治家汚職がはびこる(農産物利権も当然あるだろう)。松本さんによれば、問題の無い国はボツワナだけであり。次に良いと思われる(国づくりに意欲があるが、運営手腕が未熟で進度が遅い)のはガーナ、ウガンダ、マラウイなど10カ国ていど。その次のカテゴリーは政府幹部が利権を追い求め国づくりが遅れている。そして最後のカテゴリーは指導者が利権にしか関心を持たず、国づくりなど初めから考えてない国家、だと。
さらに現在の市場主義がアフリカ全体を覆っている、中国のアフリカ進出は資源獲得、中国人労働者雇用、そして中国製品の市場開拓が狙いである(もちろん他国も程度の差こそあれ同様だろうが)と本書は指摘している。さらに国を捨てるアフリカ人を日本、パリで取材している。そこから見える彼ら母国の現状。
本書における若干の明るいアフリカの未来は、NGO活動やアフリカで活動する日本人社長の紹介である。
本書を読み終えて思った。
他人に勝手に引かれた国境線の中に閉じ込められ、イデオロギーに翻弄され、貨幣経済のなかでGDP等の数字で語られるアフリカの国々の悲劇である。現在でも多額のODAがアフリカ諸国に流入し、民間の援助も入っている。果たして本当に国の援助は現地で役立っているのか?先進国と同じ価値観や経済システムを無理強いしていないのか?


アフリカ・レポート―壊れる国、生きる人々 (岩波新書)
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