1997−99 小説すばるに発表の7短編
藤田さんのサスペンスは読んだ事がない。いわゆる恋愛小説で藤田さんの作品を読み始めた。中年男が主人公の物語、何処か翳のある疲れた男に感情移入してしまう物語。
放春花、ホワイトクリスマス、妖精、クレマチスの女、ご馳走様でしたぁ、藤色の季節、時の流れに、の7編
放春花では良く知った東大医科学研究所病院西門の近所の話が出てくる。
ホワイトクリスマスは鞄職人の話、妖精は事故で野球生命を断たれたプロ野球選手のバット職人の話、沖縄、ハイビスカス、そしてエンディングが泣けます。クレマチスの女は画家の話、グレテいた少年がやがて画家になる、少年時代の憧れの同級生、その娘との偶然の出会い、花はテッセン、クレマティスそして、悲しいエンディング。ご馳走さまでしたぁ、は薬局の男と花やの店員の話。藤色の季節、は銀器作り職人と娘、そしてその娘の恋人が織りなすラブストーリー、ラストシーンは泣かせます。時の流れに、は時計職人の女性と、疲れた会社役員の物語。ゆったりとした時間の流れに包まれる大人のままごとの様にも思えます。そんなある種のどかな風が吹くようです。場所は北里研究所の裏の路地です。


はなかげ (集英社文庫)
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