副題:新しい関係論をめざして

20年前の思想が全然黄ばんでないのが凄いです。
それほど普遍に近いのではないでしょうか。

内山さんは貨幣の思想史―お金について考えた人びと (新潮選書)1997という書を出されている。労働がいかにつまらなくなり、貨幣に置き換わっていったかの歴史でもある。
さて本書は1988年2月に行われた第17回東北地方「学者と農家のシンポジウム」での講演録である。
第1講 私たちにとっての自然とは何か
 1.私が山村から学んできたもの
 2.自然と人間の関係について
第2講 私たちにとって現代社会とは何か
 1.1930年代と今日との類似性とは何か
 2.根無し草の大衆はどこから生まれたか
 3.不安な大衆について
 4.歴史の見方について
 5.自然―人間関係の変容と現代社会との共通性について
第3講
 1.普遍性の二つの概念
 2.人間の存在における時間的普遍性の回復をめざして
 3.再び広義の労働について
 4.広義の労働の回復とは何か
 5.近代社会とは何であったか
 6.再び労働とは何かについて
 7.広義の労働と関係性の回復

技能と技術の違い、使用価値を作り出す技能の重要性
すべてのものは自然から作り出されている事実
労働の共同性の喪失、生産システムの一部としての労働
自然と自然との交通、自然と人間との交通、人間と人間との交通
アメリカの大衆文化は労働の根っこを失った虚しさを、貨幣のみで解消
大衆の不安から、ヒットラーの出現、ファシズム。(佐藤優は歴史を後世の人々が見て、あれがファシズムだったと認識すると書いていた。すなわち当時はファシズムの認識がない)
今(1989年当時)が1930年代を上回る大衆不安の時代であるかもしれない。
非システムとして家庭の重要性。すべてがシステム化する中で。
社会を支えている精神「時代精神」として合理主義、個人主義、科学主義、発達主義
広義の労働の回復 使用価値の回復、技能の回復、自然と人間の主体の回復

今から20年前の内山さんの思想であるが、今まさに大衆が不安な時代に直面しているのではないだろうか。



自然・労働・協同社会の理論―新しい関係論をめざして (人間選書)
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