図書館本

現在コロンビア大学教授(1940年生まれ)である筆者が学生時代からの日本の繋がりを綴った自叙伝的日本政治の舞台とその舞台裏。
日本語を習うために借りた下宿は下町で、そこでの人間関係がやがて日本の政治に興味を抱く基礎になったのだろう。
著者の学位の内容はドブ板選挙の徹底取材で候補者の家に泊まりこみ、会合では支援者と一緒に酒を飲みながらまとめたそうだ。
その後の交友はまさにメインストリームである。もちろん其処に行き着くまでの道のりは平坦ではなかったであろう。そして著者の付き合いのあった政治家の事や日本の政治に関してのエピソードを綴っている。
例えば麻生さんの「自由と繁栄の弧」という外交ビジョンを裏づける具体策が無く、中国を牽制しようとしていると指摘する。
また中曽根さんの外交4原則(力以上の事をしない、ギャンブルをしない、世界の潮流を客観的に分析する、外交と内政を混合しない)を評価している。

現状および今後の日本の進む道として、国際交流の加速化だとも指摘する、これは日本の国際交流基金が英国のブリティッシュカウンシル、ドイツのゲーテインスティチュートと比較して職員および資金があまりに小さ過ぎるという事実があるそうだ。

その他多くの裏話(田中角栄と金丸信の違いとか)、政治とマスメディアの問題点や日本での想い出が綴られている。知日派であり親日派である筆者は第2知日世代だそうで、現在は既に第4、第5世代になっていると言う。そしてその世代間で当然ではあるが日本を見る価値観が変ってきていると。

ある種非常に俯瞰的で中立的な立場からの意見が多い様にも思うが、実はかなり日本への思いやりと優しさが見え隠れする。もちろんそれは奥様が日本人であったりすることも関係するのであろうが、23才で来日して、多くの下町や田舎での日本人との交流を通して得られた感謝の表明でもあるように思う。

政治と秋刀魚 日本と暮らして四五年