図書館本

「水からの伝言」が未だ学校現場で使われているという話を聞いて驚き、霊界系スピリテュアルが銭儲けの道具としてTVのゴールデンタイムになる国、ニッポン。
科学が世の中全ての事を解決することは有り得ない事を認識しつつ、科学を名乗り人を騙したり洗脳する行為は許されない。
ニセ科学、似非科学、トンデモ科学、超常科学等の色々な呼び名で語られる反証不可能な事項に関して著者(現総合研究大学院教授、1944生まれ)が疑似科学を3分類して説明する。すなわち、超能力、超科学系の所謂精神世界系のモノ、科学を装いながら科学的データを誤用、乱用するもの。そして3つ目が「複雑系」におけるグレーゾーンに属するような評価の難しいもの(地球温暖化の原因、BSEプリオン説、地震予知等々)。
また3つ目の疑似科学に関しては予防措置原則の応用(例えば地球温暖化の機序は種々言われ議論があるが、二酸化炭素が人的要因で増えているのは確かなのだから、二酸化炭素排出は減らす方向で努力するべきである)を述べる。
終章の「疑似科学の処方箋」がなかなか面白いというか最も重要なポイントではないかと思う。
1.疑似科学は廃れない
2.正しく疑う心
3.疑似科学を教える
4.予防措置原則の重要さ
5.科学者の見分け方
科学が全てを解決できる訳ではないという大前提を知った上でこの5項目を読まれるといかに現代社会が疑似科学に溢れ、メディアに左右され、時に本質を見失っているかが理解できるであろう。
メディアに露出度の高い科学者と名乗る人々がいかに物事を決めつけてYes/Noで話をするか。脳科学にしても新型インフルエンザにしても果たして本当に研究をしている学者がああも簡単に物事を言い切れるものなのか。メディア情報をテレビやネットを通して受け取る側の頭の丈夫さも問われている。

疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)