図書館本

1991年独立(それ以前はソ連)のエストニア、そこにHIV感染率90%の町があるという。エルヴァである。TVカメラを持ち込み映像を記録していくのが後藤さん(1967年生まれ)である。本書はその取材過程を平易な文章でまとめたものである。おそらく小学生から大人まで読み込めるであろう。アジア、アフリカのHIV感染爆発が伝えられて既に10年以上経つであろう。1983年にAIDSの原因ウイルスであるHIVが発見されて20年以上が過ぎている。未だワクチンはなく、HIVを体内から排除する薬剤も無い(発症を抑え長期生存は先進国では可能であるが)。
エルヴァでのHIV感染の多くは麻薬の打ち回しによる、HIV汚染された血液の針を通しての感染である。もちろん、性行為による感染も同時に起こっているようだ。
本書に登場する少女ナターシャは15歳でおそらく麻薬静脈注射により感染し、ボーイフレンドとのセックスにより妊娠。16歳で出産した時点での検査で自分がHIV感染した事を知る。
他人事だと思っていたことが自分に起こる。無知だと言う事は簡単であるが決して解決にならない。先進国の中で唯一感染者が増えている日本。
是非とも子供達に読んで貰いたい一冊である。もちろん大人が読んで子供に伝えて欲しい。ちなみにHIV以外の性感染症も若年層で爆発的に増えているのである、この日本で。

エイズの村に生まれて―命をつなぐ16歳の母・ナターシャ