図書館本

ウエブ進化論、ウエブ人間論(平野 啓一郎との共著)、フューチャリスト宣言(茂木健一郎との共著)と読んできた。
ご自身が楽観主義者と告白しているように、現状から未来への悲観的考察は無い。それはそれで著者の生き方であるから良いし、現に梅田氏自身が若者がサバイバルするには「勤勉」であることだと当たり前の事を述べられている。自分探しという文脈を若者に積極的に啓蒙しているが、青い鳥を追うためにはかなりの努力が必要である事を読み取らないと確実に下流指向に向かうだろう。其処には社会が悪い、自分を認めない日本が悪いという逃げ道があるよう見えるが、実はそんな事を言っている奴は世界に出てもそうそう成功しないという現実を梅田氏は示していない。梅田氏はご自身の努力を過小評価しているある種典型的な日本人なのかもしれない。
グーグルやオープンソース、ウイキペディアと言うIT環境は確かに「知」の裾野は広げたが、その知を使って思想することより「食うための智慧」の集積になっている現実には残念ながら言及していない。
また「高速道路」と「けものみち」の生き方を説明しているが、おそらく梅田氏本人のけもの道はいつでも街に降りられる、すなわち街の灯火が見える里山の獣道だったのだろう。
養老さんの著作も引用しているが、残念ながら脳化社会と身体性には言及されていない。
どうしても、IT社会における身体性の欠如を感じざるを得ない。シリコンバレーのローカルな思想が「貨幣」という脳化でグローバル化する事の危機感を感じる。やはり「知ること」より「考えること」が近未来でないさらなる未来の国家や地球を創造するように考えてしまう小市民である。

ウェブ時代をゆく ─いかに働き、いかに学ぶか (ちくま新書 687)