図書館本

宮本常一の生誕100年の今年、多くの本や催しが行なわれている。
旅する巨人と称される宮本氏の入門書としては間違いなく高い評価が与えられる一冊だと思う。
民俗学者などと言う枠を遥かに越えた業績と離島振興や観光分野における功績は誰もが認めるところだろう。
渋沢敬三をして「学者になるな」「満州には行くな」と言わしめたほど、宮本を評価していた渋沢氏の宮本に対する評価と思い入れが本書の中にも込められているように思う。
また、村崎修二氏の宮本に対する思いを読んだ時、目頭が熱くなった。そして佐野眞一氏の著作にあった記載を思い出した。
村崎修二が宮本を訪ねて話を聞いて
部落史と芸能史と女性史は、日本民族学であえて目をつぶって避けた三大テーマじゃ。これはそれをやってこなかったわし自身の自戒をこめていうんやが、この三つをやらなければ日本民族学は学問として本当は完成しない。部落問題でも離島問題でも一番大切なことは、地域に人間をつくることじゃ。君がそれほどやる気なら、実際に猿回しの芸を復活してみたらどうじゃ。いますぐ評価されなくてもいいではないか。五十年、百年たってのち世の人々が、あの人がやってくれたおかげで、ということがあってもよいではないか。わしもできるかぎり協力する」
その後、宮本は村崎をモンキーセンター(犬山市)に紹介しサルを譲ってもらい、今西錦司等のサル学者も紹介していった。また宮本との交友もあった司馬遼太郎とも知り合う。
司馬を訪ねた村崎に、司馬は「今西さんと宮本さんか、キミもすごい人に見込まれたもんやな、日本の本当の学問はそのお二人の間にしかあらへんのやで」といったあと「宮本さんほど恐ろしい人をワシは知らん」と言い、その後、宮本の凄さを例をあげ話したという。

宮本常一―「忘れられた日本人」を訪ねて (別冊太陽 日本のこころ 148) (別冊太陽 日本のこころ 148)