いただきもの本

一人の男が38歳の生涯を閉じる。彼は想い出を天国に持っていくのではなく、家族に「生」という言葉では表しきれない大切なものを引き継いだ。そして、書くことにより「生」を多くの読者に伝えた。
あとがきに奥様が書かれているように、主人公は飯島さんの分身であり、「死」を決して暗い、あるいは悪いイメージで描いていない。死と向き合うことにより、より充実した「生」を描いているのだと思う。飯島さん自身がうつ病になり、その回復への糸口が「書く」ことであったのだそうだ。ガンセンターという「生」「死」が隣合う現場を湿った環境とせず、ユーモアあるいはコメディーにも近いタッチでありながら登場人物全てが愛に満ち溢れている。 
飯島さん自身が病院を隅々まで歩きまわり観察しインタビューして書き綴ったこの作品は、病院の理想像を描いているのかもしれない。
直近に読んだ、秋元康さんの「象の背中」における48歳サラリーマンが癌で死んでいくホスピスもある種の理想的「終の場所」を描きたかったように感じる。
現代は死を隠蔽する社会といわれる。特に都会においては、死に接する事は少なく病院で生まれ病院で死で迎える。
本書はそんな都会に住む人々に「生」と「死」を考える時間を与えてくれる教科書でもあるのではないか。もちろん、自分で「考える」事がもっとも重要なことであるのだが。

天国で君に逢えたら
Amazonで購入
livedoor BOOKS
書評/国内純文学