いただきもの本

余命6ヶ月を宣告された48歳の男の物語。
男の狡さ、甘え、優しさ、優柔不断、責任感、弱さ、ありとあらゆる心の中の情動を言葉と言う記号で読者の心に送り込んでくる。
初めて読む方に先入観念を与えてしまうので、あえて、表現を書き留めないが(自分では付箋を何箇所か貼ってしまった)おそらくは誰もが何処かの場面を自分の経験として同調してしまうのではないだろうか。
延命措置も入院もしないと決めた主人公。家族、親族、そして不倫相手、初恋の人、高校時代に喧嘩別れしたままの友人、会社の同僚などが織り成すドラマは出来すぎだと言われればそれまでかもしれない。有名レストラン、銘菓、高級旅館やホテルが散りばめられている。しかし、男は着実に死に向かっている。都会と言う、死を極力隠そうとする世界の中で確実に死に行く人たちがいる。その人は街の中を歩いているだろうが、僕らは死を街中で見ることは殆どない。誰もが必ず死ぬ、それも一人だけで。見取られようが見取られなかろうが一人なのである。死ぬために生まれてきたとも言われる我々が死に対してどう向き合うのか? ひばりさんのために作った「川の流れのように」、秋元さんはそう言っているように思う。
あえて、批判的なことを書くとすれば、都会の死を詳細に書いている小説である。まさにそれは養老孟司さん的に言えば「脳化」した社会の中の死を一部分だけ自然と言う文脈の中で「死」を描き出しているのではないだろうか。もちろん秋元さんはそれを承知で筆を進めているのであるが。死という出来事は実は「生」と言う一瞬の出来事を輝かすための教科書である事を教えさせてくれる本であると思う。

通勤電車の中では読まない方がベターです。特に最後の方は。。。
そう言う私もさすがに、最後は家で一人で読みました。主人公と同じ歳ですから。


象の背中
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