物質である脳が生み出す価値観や思想、さらに宗教。

国の施策が時として間違える事はあるという前提が必要で、国民は当然その施策を絶対視してはいけないと言う価値観を持たなければいけないと思う。

以下記事(長いですが引用)朝日

日本最大のダム、貯水開始 水道・発電使えず矛盾も巨大
2006年09月25日

 日本最大のダム湖が25日、産声をあげる。岐阜県揖斐川町の徳山ダム。本体工事が完成し、水をためる「試験湛水(たんすい)」が始まる。総貯水容量は6億6000万トンで浜名湖(静岡県)の2倍。08年春に運用開始予定だ。構想から半世紀たち、脱ダムも言われる中、3300億円以上を投じ、国土交通省が主導して建設を進めた。だが、今になって住民対策が再燃し、水の使い道もめどがたたないなど、ひずみが次々と噴き出している。

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 ダムで水没する国道の代替道路。22日に開通したとたん、道路沿いに「9・25試験湛水反対」と書かれた横断幕が、旧村民の手で掲げられた。

 「所有権の確定など問題が山積みなのに、試験湛水に踏み切るとは侮辱している」。徳山区共有財産管理会の長屋昭二会長(69)は憤る。

 現地の旧徳山村の村民約1500人は、世帯あたり数千万円規模の移転補償を受けて、全員村を出た。だが今も、土地を巡るもめごとが尽きない。

 ダム本体から約10キロ上流の山中。旧村民の男性(55)は8月末、家を建てるため、自分の山林を切り開いた。途中の道路が水没し、孤立するのは承知の上だ。「水資源機構の言うことはコロコロ変わる。やったもん勝ちだ」

 旧村民が舞い戻り、水没しない高台に建てた家は約30戸。ここ2、3年で急に増えた。

 「都会は空気がきたない」「老いて死ぬなら住み慣れた村で」。古里の暮らしを懐かしんで戻ってきた人は多い。一方で、「また立ち退き補償金をもらえるのではないか」とゴネ得を口にする人もいる。

 事業を進める水資源機構の前身、水資源開発公団は、用地取得で多くの例外をつくってきた。

 「等価交換」と称して元の土地の10倍近い価値の土地を渡したり、原野なのに「田」として高値で買い取ったり。

 「後先を考えず金を使ってきた。ずさんな交渉のツケが回ってきた」。機構の職員はぼやく。

 代替道路建設が01年に大部分中止されたり、山林を新たに買収することが昨年10月に決まったり。混乱を招く方針転換も相次いだ。

 ダム湖で孤立する旧村民のため、12億円かけて電線や電話線を新たに引く。作業船で送り迎えもする。すべて想定外の追加負担だ。

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 昨冬の大雪で工事が遅れ、試験湛水の開始はもともと10月後半で検討されていた。それを9月中に繰り上げたのは、台風シーズンに間に合わせるためだ。現場に無理を強いても、治水効果をアピールする必要があった。

 徳山ダムは東海地方の治水、利水、発電を担う多目的ダムだ。だが、過大な需要予測がたたり、治水以外では当面、使い道はない。

 計画上、ダムの水の多くは水道水に使う。ところが取水施設は一つもできていない。水需要がなく、施設整備は後回しにされた。

 水利権を持つ愛知県と名古屋市がダムの水を使うには、水を引いてくる長大な送水トンネルを掘らなければならない。8月末に延長44キロのルートを軸に検討する方針が決まったばかりで、完成させるには今後900億円と試算される事業費投入が必要になる。

 地元の岐阜県でも、予定されていた県西部の2市9町で水を使う計画を立てた市町はない。

 水力発電も電力需要の伸び悩みから、04年に発電規模を縮小した。発電所の建設計画は中断したままだ。

 ダムがある揖斐川の中流域の住民で、水害被害を問う訴訟の原告団長、安保智晴さん(66)は言う。「誰も水がいらないなら、いっそダムを空にしておいてくれると大雨の時に安心なんだが」