大雨が降れば増水する。これは太古の昔からの常識であろう。
しかし、ダムからの放水量をいきなり増やせばどうなるか?
しっかり検証していただきたい。(当初ダム放流はないとの報道もあったらしい)

以下記事
酒匂川増水:15分で濁流胸まで 中州から次々救助 お盆のアユ釣り、暗転 /神奈川

 ◇1人死亡1人不明
 お盆休みの釣り人たちを突然襲った酒匂川の増水。水位はあっという間に上昇し、逃げ遅れた2人をのみ込んだ。1人死亡、1人行方不明の事故を目撃し、13人が亡くなった99年の玄倉(くろくら)川キャンプ事故を連想した人もいた。【大西康裕、内橋寿明、野口由紀】
 現場はアユ釣りの名所で、6〜8月には大勢のアユ釣り客やバーベキュー客でにぎわう。小田原市中曽根の酒匂川で、同市内の無職の男性(66)は午前11時半ごろ、アユ釣りを中断して、岸で昼食を食べていた。
 少し水が濁ってきて、10〜15分ぐらいで、ひざぐらいだった水かさが胸の高さまで来て濁流になった。男性は流れにまかれて動けなくなっていた釣り人を助けた。200メートルぐらい下流の中州に8人が取り残され、消波ブロックにしがみついている男性もいた。「大変だ」と思い、携帯電話で119番通報した。
 消防隊は命綱を着けて川の中に入ったが、流れが急で助けられなかった。県警ヘリコプターが到着し、次々と救助した。
 小田原市栢山に住む高橋壮一郎さん(64)は会社が休みで、酒匂川の堤防から約200メートル離れた自宅にいた。17日午後1時過ぎ、ヘリコプターと消防のサイレンの音で異変を知って堤防に行くと、約50メートル先の中州に男性2人がうずくまっているのが見えた。両側を茶色の濁流にはさまれ、高橋さんが「泳いで渡るのは危険過ぎる」と思っていると、ヘリが中州に着陸し、消防隊員に誘導されて2人は救助された。
 近くでアユ漁のおとり魚を売っている店の店員の岡田晋さん(35)は「水が増えても、まだ釣りを続けている人がいた」と話す。あちこちで中州に取り残されているのを知って、高橋さんは山北町の玄倉川の水難事故を思い出した。「上流でよほどの大雨が降ったのだろう」と驚いていた。
 山北町の高瀬橋付近で行方不明になった藤沢市西富、無職、杉崎光男さん(66)は鎌倉市内の公務員の男性(57)と釣りをしていた。釣りを始めた午前7時半ごろ、深さは約50センチだった。同9時ごろ、一時強い雨が降り、男性は「水の色が濁ったことに気づいた」という。そのうち深さは約80センチに増して、2人は岸に上がろうと声を掛け合った。しかし岸まであと8メートルの場所で2人とも流された。男性は約200メートル流されて岸にたどり着いたが、杉崎さんの姿は見えなくなった。
 高瀬橋付近の現場について、県松田土木事務所の笠原俊男・河川砂防第一課長は、「現場の河川幅がほかより狭いので、急激に水位が上がったのではないか。当時はほかにも釣り客がいて、『周りに人がいるから大丈夫だろう』と考え、逃げ遅れたのではないか」と話している。
 ◇県「鮎沢川の影響大」
 酒匂川の水源・丹沢湖の三保ダムは午前9時半ごろから、降雨によるダム水位の上昇を受けて放流量を上げ始めた。県河川課によると、通常は毎秒10トンの流量を徐々に増やし、正午には毎秒23トンを支流の河内川と酒匂川に流していたという。
 ところが、県は当初、「放流の事実はない」としていた。同ダム操作規則は毎秒25トン以上放流する場合は下流に通報することを定めており、「放流にはあたらないとの認識だった」(県河川課)という。また、制限以下の流量だったため、同ダム管理事務所は警告を発していなかった。
 事故現場の上流では午前10時からわずか45分間に水位が71センチ増し、最高1メートル12センチに達したが、県は「同時点での放流量は通常の2トン増し程度。下流の水位にはほとんど影響ない」と、ダムの放流と増水の因果関係を否定。「洪水時には毎秒1300トンを流したこともある。昨年も250トンで流した。23トンは日常操作の一環に過ぎない」と話している。
 静岡県御殿場市から酒匂川に流れ込むもう一つの支流・鮎沢川の静岡と神奈川の県境付近では、午前8時に毎秒13トンだった流量が同10時15分には70トンにまで跳ね上がっており、県は「鮎沢川からの流れ込みの影響が大きい」との見解を示した。【稲田佳代】
 ◇天然アユも遡上
 酒匂川は県内で2番目に広い流域面積を持つ二級河川。小田原市、松田町、山北町にかけては天然アユの遡上(そじょう)もみられる漁場として知られる。
 事故が起きた付近一帯はアユの遡上を妨げないよう自然河岸が多く残されている。雨が降っても降雨量の半分近くが土中に染み込み、急な増水が起きにくい場所だという。【稲田佳代】
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 ◇玄倉川キャンプ事故
 99年8月14日朝の集中豪雨で、丹沢山系などの河川でキャンプをしていた人たちが増水した濁流に流され、一時20人が行方不明になった。特に玄倉川では、中州でキャンプしていた18人が流され、13人が死亡した。前夜に上流のダム管理者が放流のサイレンを鳴らし、警察も注意を呼びかけていた。

8月18日朝刊
(毎日新聞)