山小屋のトイレ問題、高山植物の盗難、山を観光地へ導くわな、電源開発のための電気と治山のためのダムが山に与える生態的影響と経済的影響、世界遺産登録がもたらす弊害、大規模林道の必要性等を実際に現場を見てレポートしている。ある種、一般国民が目にしない場所で着々と進む公共事業への告発でもある。
自分自身も未舗装の山道を車で走っていて、いきなり一般国道と間違えるような舗装道路に出会う事がある、そして毎年、少しずつ奥に舗装が進んで行く。一体誰のための道路なのか考えてしまう。

世界遺産の問題では、白神山地の入山規制にも言及していて、これは根深誠さんも以前より異議を唱えている。すなわち、青秋林道を作ろうとしていた林野庁が反対運動で林道を作らなくなったら、今度は世界遺産と言う看板を使って一般人の入山禁止を打ち出す。誰が考えてもオカシイ。
大規模林道の件では霞ヶ関のお役人様は現場を見た事がないのに著者にブリーフィングしてくるとの事。

地域振興と言うお題目を掲げ事業を行っているが、実際どれほど森を守る上流域の人々を日本はサポートしているのか?林野庁は大赤字だそうだが、森を守って赤字なら国民は納得するだろう、しかし森を破壊して赤字ならその責任は重い。

登山(沢登り)も釣りも文化だと言う人がいる、勿論文化になって欲しい、しかし文化と声を上げるのであれば日本の森や渓流が置かれている現状をしっかり認識して行動を起こすことが必要でないのかとこの本は訴えていると思う。
日本の山を殺すな!―破壊されゆく山岳環境