出版されて10年経った書籍ですが、不勉強の小生には勉強になる一冊です。登山家、ジャーナリスト、学生時代はチャリンコで日本中を走った石川氏が日本の森の現状を感性豊かにレポートしています。
ダムやスーパー林道が出来て幸せになる地元は何処のない事が改めて分かります。下流域の人々のためのダム、経済交流だの地域発展との掛け声で始まる高規格の林道。いったい誰のためのモノなのか?本当に過疎対策や地域振興になるのか?税金の使われ方が正しいのか。自然を管理して作ったダムは堆砂で十分な機能を果たさなくなっている。誰がそれを的確に予想できたのか。山梨県のN山ダムもこの本が書かれた段階で93%の堆砂率で全国3位だそうだ。1位は大井川の千頭ダムの97.4%. 
最後に書かれている。長期ビジョンの必要なリンや事業に独立採算制を取り入れ、巨額な赤字に苦しむ林野庁、過疎化の進行に歯止めのかからない山村、そうした森林全体を国民レベルで真剣に討議し、林道の在り方にもはっきりした考えを打ち立てる時期にきているのではないだろうか、と。2006年である。10年が過ぎた。一昔前のこの本からどのように森は変わったのだろうか。また調べないといけないと思う。

第1章 山岳破壊ハイウエー―山形・朝日連峰からの報告
第2章 秘境の終焉―熊野川源流と有峰湖開発
第3章 国有林神話の崩壊―群馬県草津町に残した大きな遺恨
第4章 ダム現場からの警告―黒部川・出し平ダム排砂問題ルポ
第5章 堆砂ダム紀行―天竜川の泰阜、佐久間ダム
第6章 山村疲弊の構造―終わりなきダム開発の地・奥只見
第7章 御岳山への残像―長野県西部地震十年後の王滝村
第8章 山岳無人地帯―マタギ集落・三面への彷徨
第9章 転機の林政―富山県の林道開設の現場から
森が滅びる―林道とダム開発現場を行く