読み終えました。読む順番を間違えました。この本を読んでから、秋月さん清水さんの本を読むべきでしょう。発行年もこれが古いですしね。
願わくばもう少し値段が安くないと中々一般の方は手にしないと思います。ちなみにおいらはヤフオクです。

本書は2001年6月に日本魚類学会自然保護委員会主催のシンポジウム「ブラックバス問題を科学する - 何をいかに守る?」で提供された話題の中から再構成された課題を収録している。前半部分は研究成果を中心とした科学的側面に焦点を当てており、ブラックバスの生態系への影響等を示している。もちろん率直に今後さらなる調査研究の必要性も指摘している。後半部分は社会的問題としてブラックバスを論じている。特に大浜先生の河口湖に係るブラックバス問題、丸山先生の行政対応としてブラックバス問題そして最後に中井先生が琵琶湖を取り巻く問題点に話を進めている。そして最後のまとめで中井先生の下記の文章で終わる。研究者としての確かな観察とそれに基づく考察には脱帽である。


外来種問題が注目を集めるようになったのは,その侵害的影響が看過できなくなってきたからである。自然環境の保全への国際的動向のなかで,われわれが将来の世代に引き継ぐため保護しようとしている在来の種や生態系を,特定の外来種が脅かしている。こうした外来種問題にはさまざまな人為が介在するために,純粋自然科学だけでなく人文社会科学の諸分野を含んだ学際的な取り組みが重要である。また,行政的にも分野(省庁。部局)横断的な整合性のある対応が望まれる。こと淡水魚の保全に関して,行政的対応に問題のあることにも触れておきたい.長年にわたって,水産庁は水産上有用魚種しか管轄せず,環境省も水の中は水産庁の領分として及び腰であった。結果として,風前の灯火となった多くの小魚たちは「行政から見放された」状況に置かれ続けてきた. この状況を改善すべく,早急な救済的措置が求められる。
ブラックバス問題は,健全な野外活動としての印象が強い釣りという娯楽が,環境保全の視点から見るとさまざまな問題を孕んでいることを顕在化させた。「『たかが釣り』のために,公共の財産である在来自然が脅かされる」ことが看過できなくなってきているのだ。もちろん,釣りには「されど」の部分に含まれるすばらしい効用のあることは十分承知しているつもりである。だが,当事者である業界や釣り人の間に,「たかが釣り」にあぐらをかいた現状の軽視が垣間見える.「たかが」という甘えが「されど」の効用を蔑ろにしているのではないだろうか。
最後に,ブラックバス問題は外来種問題であり,その基本は予防的措置にこそあることを確認しておきたい。すなわち,すでに侵入した外来魚に関しては,これ以上の分布拡大を阻止し,新たな外来魚に関しては侵入そのものを未然に食い止めることが最重要課題である.「科学的。経清的な確実性のない状況を,外来種の管理(根絶。抑制)を先延ばしにする理由にしてはならない」との原則を、 とくに予防的措置の苦手な行政関係者や実証主義に縛られがちな研究者は、 厳粛に受け止めるべきである.外来種問題という悩ましき課題に有効に対処するためには,われわれ日本人の苦手な「縁起でもないこと」を真剣に考えることが重要なのである。

川と湖沼の侵略者ブラックバス―その生物学と生態系への影響