イワナ勉強会  051127 日光水試

日本のイワナはオショロコマ(dolly varden)より北米のbull troutに近い事が最近
分かってきた。

以前にも書いたが、岩魚の違いはニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ゴキといった地域
的違いが遺伝子解析で証明出来ると仮定していたが、実は河川間での特異的遺伝マー
カーが検出され、これはおそらく氷河期と間氷期の繰り返しにより、イワナが陸封さ
れて地域特異的な進化を遂げてきた証拠かもしれない。

知床のオショロコマの中には間違いなくイワナとの自然交雑したものが存在する。

在来種の保護保全に関して
 砂防ダムの上流と下流を比べると、明らかに上流部のイワナの遺伝的多様性は低下
しており、このまま放っておくと、上流域の水量とか魚体数にもよるが30−100年で絶
滅する。
砂防ダムの多くが1970年だいから作られていることから考えると早いものは既に絶滅
している可能性が高い。(函館近郊での調査で証明)

保全のための方策
1) 生息域の質および量の増加拡大
2) 移植による遺伝的多様性の確保(支流間での十分な科学的根拠があるという
前提)
3) 生物学的コリドー(回廊)の造成
4) 絶滅した地域での再生産  

 特に2が問題となるが、移植による遺伝的多様性は初期実験としては成功している
との事。
養殖あるいは増殖においては継代飼育による適応低下が起こり、自然に戻した時にま
ったく生存出来ない固体が産出される可能性があるので、飼育はなるべく小さい池を
多く用いて少数集団での繁殖を試みる方が良い。

現時点である技術を用いる事により(PCR法と遺伝子解析)、移植種判定(よそ者鑑
定)も可能となってきたので、水系の保護などのための科学的根拠として使用してい
く事がのぞまれる。

移植においては、滝上移植などが良く行われるが、滝上に本当に魚が居ないのか?
(居ることの証明は簡単だが居ない事の証明は難しい)魚が移植されることによる生
態系の変化等もしっかり検討せねばならず、安易な移植放流はその河川全体の遺伝的
特異性を阻害する恐れがある。

間違いがあればご指摘ください。
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