この菌には想いである。今でこそウイルスの仕事をしているのであるが
下記の記事でコメントされている光岡先生(当時東大教授、理研主任研究員)の
授業を理研で見学とともに受けた時にマジで腸内細菌を研究したいと思った。
当時(20年くらい前)腸内細菌の分離同定は殆ど行われておらず、光岡先生が
自ら設計構築された実験器具等で勢力的に世界の最先端を走っていた。
特に凄かったのは、無菌マウス(SPFより更に凄い、体内になんら細菌がいない)
にビフィズス菌とウエルシュ菌(いわゆる悪玉菌)をそれぞれ接種して観察
したものであった。その結果はなんとウエルシュ菌を植えられたマウスの何割かが
肝臓癌になったがビフィズス菌の方のマウスはなんともなかったと言うデータで
あった。あまりに綺麗なデータで鳥肌がたった記憶があり、そんな訳で今も鮮明に
覚えているわけである。
腸内細菌といえば聞こえが良いかもしれないが、要はウンコの中の細菌研究である。
ヒトがあまりやりたがらない仕事を地道にやった者だけが得られる素晴らしい研究
成果だと思う。その後の仕事をフォローしていないがこの記事で光岡先生の名前を
見て20年前を思い出した。

ビフィズス菌 インフルエンザ予防に効く!?
 ビフィズス菌を多めに取る高齢者は、免疫機能が高まり、インフルエンザウイルス
に感染しにくいという研究結果を、森永乳業栄養科学研究所(神奈川県座間市)がまとめた。
今年3月に開かれる日本農芸化学会大会で発表する。

 茨城県内の介護老人保健施設に入所している高齢者27人(平均年齢86歳)
に2004年11月から毎日、ビフィズス菌の一種「BB536」を1000億個
含む粉末(2グラム)を飲んでもらった。インフルエンザ流行のピークが過ぎる
昨年3月末まで飲み続けたグループ(13人)には、飲む前に比べて、白血球の
殺菌機能が高まる傾向が見られ、インフルエンザ発症者がいなかった。一方、
1か月半で飲むのをやめたグループでは、14人中5人が発症した。

 光岡知足(ともたり)・東大名誉教授(微生物生態学)は「免疫力の下がった
高齢者にとって、インフルエンザにかかりにくくなる効果が期待できる。
ただ即効性はないので、流行の1か月以上前から飲み続けることが望ましい」
と話している。

(2006年1月4日 読売新聞)

岩波新書の「腸内細菌の話」を授業の時に頂いた。凄い本でした。
またこんな本も監修されているようです。
腸内フローラと感染・免疫